英国人哲学者であるバートランド・ラッセル(Bertland Russell, 1872-1970)の「自由人の十戒(A Liberal Decalogue)」をたまに読み直して、自分の仕事や行動について反省することにしている。
「自由人の十戒」については、10年前のちょうど今頃にも当ブログで紹介したが、独立して15年、広報の仕事を始めて四半世紀になることもあり、この機会にあらためて読み返してみた。
(クォーテーションマークで括った部分が、ラッセルについて日本語で紹介する「バートランド・ラッセルのポータルサイト」からの引用です。>のあとに書いてあるのは当方の独り言であります)
” 一、何事も絶対確実だと思い込んではいけない。〔この世に絶対確実なことなどありえないからだ。〕”
> 広報の武器は情報です。その情報の確実性を高めるためにさらに多くの情報を集める。100%確実なものなどないという考えに拠って立ち、情報収集の手を緩めないことが、質の高い情報発信につながります。
” 二、何事も証拠を隠してまでして、物事をはこぶ価値があると考えてはいけない。なぜなら、そういった証拠は必ず明るみに出るものだからだ。”
> 危機管理における真理です。
” 三、成功を確信しても、考え続けることを決してやめてはいけない。”
> 広報が思考停止してしまったら、それは企業や組織の犬になることを意味します。優秀な広報は、仮に何かのプロジェクトの広報活動が一時的に成功したとしても、その成功に浸る間もなく次の一手を考えていることでしょう。社会とのコミュニケーションには切れ目がないのです。
” 四、反対意見には、家族の反対でも、議論で説得し、権威で勝とうとしてはいけない。権威を使っての勝利は、真の勝利ではなく、単なる幻にすぎないからである。”
> 広報を取り巻く環境には対外的にも社内的にもいろんな力関係があるわけですが、あくまでもコミュニケーションによって物事を前に進めていくのが広報だと考えます。
” 五、他人の権威を尊重するには及ばない。なぜなら、それが尊敬に値しない権威であると露見するのが普通だからである。”
> 権威に弱い人間は広報に向かないと思います。経営陣という社内権力と第四権力といわれるマスメディアとの狭間で行う仕事だから、権威に媚びる性格だと仕事になりません。
” 六、有害と思う意見を力で抑圧してはいけない。なぜなら、もし力で抑えれば、それらの意見は(将来)同じようにあなたを抑圧するようになるからである。”
> とにかく広報はコミュニケーションで問題解決する仕事です。たとえば、自社にとって有害だと思われる報道があったとして、何らかの力を使ってつぶしたとしても、その場しのぎにしかなりません。あくまでも情報とコミュニケーションで失地回復を図るしか道はありません。
” 七、自分の意見が並外れたものであっても恐れてはならない。なぜなら、現在当り前と思われている意見はいずれも当初は並外れていたからである。”
> ここでいう「並外れた」とまでいかなくても、常識を疑うという姿勢は常に持っていたいものです。
” 八、嫌々ながら賛成するよりも、良く分別を働かせて異議を唱える方が良い。なぜなら、もしあなたがあるがままに知性に価値を認めるならば、前者よりも後者の方がより深い同意を意味するからである。”
> たとえば不祥事が起きた時など、組織のあからさまな防衛姿勢に対して広報が異議を唱えなければならない場面がでてくるでしょう。
” 九、たとえ真実が不都合なものであったとしても、どこまでも良心的に真実に忠実であるべきである。なぜなら、もしあなたが本当のことをかくそうとすると、もっと都合が悪いことになるからである。”
> これも危機管理の真理です。それでも不祥事の際に、事実をきちんと公開しないとか、トップが記者会見に出てこないとか、ウソをつくとか、そうした初歩的なことでダメージを深くしてしまう事例があとを絶たないのはなぜなのでしょうか。
” 十、愚者の楽園に暮らす人々の幸福を羨ましがってはいけない。それを幸せだと考えるのは愚か者だけだからである。”
> 広報は組織の本質がわかるポジションですので、組織が愚者の楽園だとわかったらさっさと退散しましょう。残念ながら愚者の楽園だけは、コミュニケーションの力では変えようがありません。
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