ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が日本の優勝で幕を閉じた。1次ラウンドの韓国戦こそちゃんと観戦できなかったが、今日の決勝まで、どの試合もエキサイティングなイベントであった。
韓国戦も日本の逆転劇だけは偶然に堪能することができた。その日は東京・恵比寿で酒を飲んでいた。二軒目に流れようとしているところで、街頭テレビを首尾よく見つけた。スポーツを観戦しながら酒を飲むスタイルの居酒屋が、店の入り口にもモニターを設置していたのである。3回表を終わって0-3で韓国リード、その裏の日本の攻撃中。
歩道にベンチがあったので酔い覚ましがてら腰をおろして観戦していると、ひとり、ふたりと足を止める人が増える。見も知らぬ人たちと応援することになった。吉田正尚選手のタイムリーで逆転したところを見届けて、みんな夜のとばりの中へと散っていった。
それにしても吉田選手。準決勝メキシコ戦の7回裏に右翼ポール際に放った同点本塁打、8回表のあわや3点差という場面で本塁で刺した好守(個人的にはこのプレーが勝敗を分けたと思っています)。
なんといってもスイングした後のたたずまい。ヒットや本塁打は無論のこと、ファウルや空振りでもほれぼれする。いや、そうした打ち損じの時の方が凛としたものを感じるといっていい。
その姿が、黒澤明監督「七人の侍」で宮口精二演じる孤高の剣客、久蔵に見えたのは僕だけでしょうか。
PHOTO: 浜離宮の菜の花畑