NHKのドキュメンタリー番組でおもしろそうなものはかたっぱしから録画するのだが、ついついたまってしまう。別に時間がないわけではないのに、その時には絶対見なきゃと思っていたもの、例えば盛夏に放送される戦争関連のドキュメント、などは放っておくとタイミングを逸してハードディスクに置きっぱなしになる。
広報やマーケティング活動での情報発信は、社会の時勢・時流を見極め、社会的関心が集まっているタイミングをはかることが情報の社会的価値を高めることにつながるけれど、自分が見ようと思った映画や番組においても、自分的関心のタイミングを逃すと自分的価値が時とともに失われ、しまいにはディスク容量がパンクし、見ることのないまま古いものから削除していくことになる。
11月27日に放送された「地方紙は死ねない」という番組は、録画を早めに見て本当によかった。「ノーナレ」という文字通りナレーションなしのドキュメンタリーシリーズで、今回は秋田魁新報社の記者を密着取材したものだった。一番の見どころは、イージス・アショアの配備計画に関するスクープがどのようにしてもたらされたか、ということに迫った部分で、真実に肉薄しようとして切り込んでいく記者たちの姿勢には実に感銘を受けた。
一方で、ぼくが長いこと広報の仕事をしているからなのか、記者の価値観とか行動指針のようなものを垣間見ることができる日常的な場面も、また強く印象に残った。最後までベストな言葉を選ぶ。記事を単語単位ではなく一文字一文字チェックする。促音の「っ」一つ入れる入れないで真剣に議論し、読者にどう伝わるかを吟味する。そのために徹底的に文章を直す。こうした記者の仕事を理解しようとしないと、メディアリレーションの仕事は決してうまくいかない。
広報の文章仕事に参考になることもある。ぼくも普段できる限りやるようにしているのだが、書いた文章を音読するのである。この番組でも、記事を声に出して読み、細部を確認している記者を映し出すシーンがあった。広報の仕事でも、プレスリリースなど書いた文章を音読してみると、わかりにくさや論理の破綻が浮かび上がってくることがある。
“ノーナレ「地方紙は死ねない」”は、12月31日午前11時20分から再放送されるようです。
(PHOTO:ある初冬の夕暮れ)