企業の広報部門で主にメディアリレーションの仕事をしてきて、その土台の上で今の仕事に取り組んでいますが、ここ数年は広報やPRの枠にとらわれないように意識しています。
広報・PRの観点では、世界初・日本初などの新規性や時流にのった話題性のある製品・商品だったり、すでに存在自体が社会性や公共性を持っている一部の大企業だったりすれば、特定の企業の情報でも素の状態で報道される高い可能性を持っています。その情報自体に価値があるとみなされるからです。
しかし、それ以外のほとんどの企業の製品やサービスなどの情報は、そのままニュースになる可能性は総じて低い。ミもフタもないような言い方になってしまいましたが、たいていの場合、製品やサービスやその他の企業の取り組みについて企業側の視点でしか語られておらず、ニュース性が見当たらないからです。
たしかに広報・PRでもっとも大切なのは事実です。しかし、新規性や話題性に乏しい事実を不器用にそのまま発信しても、ニュースにしてもらうことはむずかしいのも事実です。その情報はまだ素材でしかありません。その情報を可能な限り価値のあるコンテンツに進化させることが必要です。
情報素材に価値を加えたコンテンツ=コミュニケーションコンテンツを作って情報発信することを提案して、コミュニケーション業務のお手伝いに取り組んでいます。
具体的には、市場での問題点を設定し(場合によっては仮説を立て)、問題意識を喚起するような課題にブラッシュアップして、どんな製品やサービスがその課題をどのように解決するのかというストーリーを作ります。つまり訴求シナリオを作るのです。特に購買行為まで時間がかかる企業向けコンピューターシステムやソフトウェアなどのメッセージアウトには、このプロセスが有効だと考えています。(これを行うのは広報やマーケティングの知識があっても業界や製品の知識・知恵・アイデアがなければむずかしいです)
広報・PR視点で作ったコンテンツは、客観性を考慮していることから説得力の高いものができます。そしてそのコンテンツを、広報・PR活動だけでなく、広告、Web、イベントなどの複数のコミュニケーションチャネルを使って多面的に情報発信することによって一定の効果が期待できるのです。
以前、旧知のマーケティング会社CEOが大手広告代理店とマーケティングセミナーを開くと聞いて勉強しにいってきました。美容や健康分野のストーリー化マーケティングの内容だったのですが、とても刺激を受けました。商品を取り巻く環境をストーリー化・シナリオ化し、PR、広告、ウェブ、そして流通(店頭)にまで関与して商品を売っちゃおうというのです。ダイナミックです。商品の価値が比較的わかりやすい一般消費者向け商材でも、優れた商品を出せば売れる時代はとっくに終わっていて、消費者が買いたくなる文脈でコミュニケーションしないと売れない。
BtoCもBtoBも、根っこの部分はそう違いはないと思います。
*2011年8月18日に目黒広報研究所に投稿したブログを一部加筆修正して掲載しています。