前回のエントリーで「広報はトクな仕事なり」とかなんとか言っておいてなんなのですが、成功してあたりまえ、失敗はダメです、という無言のプレッシャーをいつの間にかかけられているのも、広報の仕事の現実である。
記事が出なければ「なぜ出ないんだ」と言われ、記事が出たら出たで特にほめられることもなく、ちょっとでも批判的な記事が出ると「なんでこんな記事が出るんだ」と責められる。
フロントや監督は、広報に対して、いつも打率10割を求めてくる。相手がバッティングピッチャーなら可能かもしれない。しかし、広報の仕事のお相手は百戦錬磨、海千山千、手練手管の記者や編集者である。
ちょっと古いけれど、巨人の堀内のように速球でグイグイ押してくる本格派もいれば、左のサイドスローからクセ球を繰り出しノラリクラリと打者をかわすヤクルトの安田、やさしそうな顔で胸元をエグるカミソリシュートを投げ込む大洋の平松などの技巧派もいる。みんな独特の個性を持つ、プロの一軍のピッチャーなのである。
ビジネス誌の元記者K氏は言った。「企業の広報で1回成功するために2回以上失敗する会社がほとんど。2回の失敗で1回成功できたらかなり上出来だよ、田中くん」
あまり完璧を目指さずに、やれることはすべてやったんだからあとはなるようになれ、と考えて、江夏と王のようなライバルとの真剣勝負を楽しむくらいの気持ちのほうが、かえっていい結果が生まれるのではないか。わたしの体験からもいえることです。
たしかに、広報の対応の誤りが組織の致命傷になってしまうことがあるから、広報担当者はいつも気が抜けない。
でも、長い目で見れば、広報の仕事はいい時も悪いときもある。心の中ではこっそり、トータルでならして打率3割でオッケーくらいのイメージでどうでしょう。
残暑お見舞い申し上げます。
*目黒広報研究所に投稿したブログを転載しています。