経営を強くする広報コンサルティング|株式会社プラスワンコミュニケー ションズ

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2013.11.11

広報活動の要としてのメディアリレーション

JA 農業協同組合の月刊誌「経営実務」2013年11月号に「広報活動の要としてのメディアリレーション」というテーマで寄稿しました。このブログにも採録します。

「広報活動の要としてのメディアリレーション」

1、はじめに

ソーシャルメディアの発展により、だれでも簡単に情報を発信できるようになりました。企業や各種団体においても、広報活動においてソーシャルメディア活用を重視する傾向が強くなってきています。しかし、企業や団体では、ソーシャルメディアなどを活用した直接的な発信と、マスメディアを通じた客観的な報道の両輪があってはじめて、社会や市場との信頼性の高いコミュニケーション活動を行うことができます。本稿では、企業や団体の広報活動において、マスメディアとの良好な関係の構築、すなわちメディアリレーションが必要な背景とその意義、メディアリレーションにおける基本的な活動、そしてメディアリレーションを円滑に進めるためのポイントについて述べます。

2、メディアリレーションが必要な背景とその意義

ネット利用が一般的になり、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアの隆盛もあって、だれでも簡単に情報を発信できるようになりました。一般の人々も自らがメディアとなり、毎日さまざまな情報を活発に発信しています。企業や団体においても、広報活動におけるソーシャルメディアの活用を重視する傾向が年々強くなっています。経済広報センターの調査によると、2011年の段階で回答企業の約25%がソーシャルメディアを活用した広報活動を実施し、実施していない企業でも70%以上がソーシャルメディアの活用を検討あるいは検討課題としており(*1)、現在も引き続き高い関心が集まっていることに異論はないでしょう。ソーシャルメディアは一般に、双方向のコミュニケーションが構築しやすい特徴を持っており、企業や団体と消費者の積極的な関わりを演出できます。

しかし、従来から企業や団体の情報開示の中心であった、報道機関、すなわちマスメディアを通じた広報活動の重要性が低くなったわけでは決してありません。たしかにソーシャルメディアの出現によってマスメディアは変化や進化を迫られていますし、しばしば報道の姿勢が問われることもあります。その一方で、新聞やテレビによる情報の信頼度は依然高い水準です。2012年の新聞通信調査会の調べでは、インターネットを含む各メディアの情報信頼度で、トップはNHKテレビ、次に新聞という結果となっています(*2)。消費者は、マスメディアによる客観報道に対して、まだまだ高い信頼を寄せています。ソーシャルメディアの出現は、消費者や顧客などと接点を持つための新しい手法を与えてくれましたが、あくまでも企業や団体からの直接の情報発信であるため、使い方を誤ると広告と同様に懐疑的に見られることも少なくありません。わたしは、企業や団体がネットを活用した直接的な情報発信に積極的になればなるほど、マスメディアによる報道を得る意義はむしろ大きくなると考えています。

企業や団体が、社会的な存在価値を高めたいと考えるなら、マスメディアとの良好な関係を構築することが必要です。ネットの発達で、広い意味での広報活動の手法は多彩になりましたが、広報とは本来的には企業や組織がマスメディアに適切に情報開示して社会や市場の信頼を醸成する活動です。発信した情報で報道を得ることはそう簡単ではありませんし、報道されても必ずしも思ったとおりに報道されないケースもあります。しかし、マスメディアについて理解し、ポイントをおさえた上で長い目で誠実に取り組めば、客観報道という大きな成果が得られます。繰り返しになりますが、消費者はマスメディアの報道に対して依然として高い信頼をおいています。今こそメディアリレーションに果敢にチャレンジするべきだと思います。

3、メディアリレーションにおける基本的な活動

マスメディアとの関係を構築するための第一歩は、マスメディアへの情報提供です。そのもっとも基本的な手法としては、プレスリリース、記者発表会、取材対応の3つがあります。もちろん、情報提供の方法はこれだけではありませんが、マスメディアで実際に取材活動を行っている記者や編集者と個別によい関係を形成しながら、これらの基本活動を適宜・適切に実施することがメディアリレーションの土台となります。

まず、プレスリリースがメディアリレーションにとっての大黒柱です。プレスリリース(またはニュースリリースとも呼びます)は、企業や団体が行う事業活動の中のさまざまな事柄を、マスメディア向けのニュースの素材として文書にまとめたもっとも基本的なツールです。プレスリリースの目的のひとつは、その情報がマスメディアのニュースとして報道されることであり、その事柄の、どこが新しいのか、社会のどんな利益になるのか、といったニュースバリューが盛り込まれている必要があります。もうひとつの大事な目的は、企業や組織が行う事業活動の情報を公開して社会の理解を深めてもらうことです。プレスリリースは本来的にはマスメディア向けの資料ですが、現在ではホームページに掲載したり、ソーシャルメディアを通じて発信したりして、消費者や顧客などに直接読んでもらう公式の情報・声明でもあります。事業活動の基盤である社会に向けた発表文書として、事実が正確にわかりやすく表現され、内容が十分に検討されたものでなければなりません。

より社会的に関心が高いと思われる内容の発表については、記者に集まってもらって発表会や説明会を開く場合があります。トップや幹部が記者に対して発表内容やメッセージをプレゼンテーションする場を作るのです。企業や団体の代表が顔を見せて発表内容を直接説明し質問に回答することで、プレスリリースのみの発表よりも記者の理解が深まり、報道につながる可能性が高まります。また、記者の前でプレゼンテーションすることによって、その発表にかける熱意や発表内容の魅力を視覚的にあらわすことができるため、よりメッセージを伝えやすいのも発表会や説明会を行うメリットです。それだけに、記者の納得感が得られる説明ストーリーを十分に検討し、準備を徹底する必要があります。企業や団体の広報業務もネットを使ってできることが増えてきましたが、メディアリレーションを活性化するには記者と顔を合わせることが重要です。

記者の取材活動に協力することも、マスメディアへの情報提供の基本的な活動です。取材対応には、マスメディアからの取材依頼に応える場合と、企業や組織の側から積極的に取材を働きかける場合があります。取材依頼に応える場合は、記者にあらかじめテーマを持って記事をまとめようという意図があることが多いため、プレスリリースや記者発表会と比べて記事になる確率は高くなります。ただし、記者の意図を正しく理解しないまま、安易に取材対応してしまうと、社会に誤解を与えかねない記事が出てしまうリスクもあります。取材依頼に対しては、まずは記者の取材活動に貢献できるかどうかという視点で内容を精査し、その上で自分たちのメッセージを正しく伝える場になりうるかどうか検討することが大切です。また、企業や団体の側から取材を働きかけることで、マスメディアに積極的に情報提供することも有効です。イベントや催し物への取材誘致もそのひとつです。メディアの特性にあったニュース性に富んだ内容を提供できれば、報道される可能性も高まります。いずれの場合も、マスメディアと1対1でコミュニケーションできる貴重な機会を創出するとともに、正しい取材対応を行うことによって記者の信頼を得ることができれば、メディアリレーションの土台がより一層強固なものとなります。

4、メディアリレーションを円滑に進めるためのポイント

これらの基本的なメディアリレーション活動を効果的かつ円滑に行うには、「自らを知る」、「マスメディアを知る」、「両者の意識ギャップを知る」という3つの「知る」がポイントになります。これらは、企業や団体のトップ、幹部、広報担当者など、マスメディアと良好な関係を築いて社会とのコミュニケーションを図ろうとするすべての人が、最低限心がけておくべきことであります。

メディアリレーション構築の基盤として第一に求められるのは、所属する企業や団体に関する知識です。逆説的かもしれませんが、「3、メディアリレーションにおける基本的な活動」で紹介したような手法やテクニックを知ることではありません。商品やサービスについてはもちろんのこと、企業や団体の成り立ち、文化、価値観、理念、事業領域や業界に関する幅広い知識を頭の中に整理されていることが必要です。これらの内容がマスメディアの視点で価値のある情報であれば、記者の取材活動のヒントや実際に記事を書く素材になります。取材に答えるトップや幹部は、またこの人に取材したいと記者に思ってもらえる存在になり、マスメディアの窓口となる広報担当者は、わからないことがあったらこの人に教えてもらおうと記者に頼られる存在になれば理想的です。これによって、マスメディアとのやりとりが頻繁になっていきます。

次に、良好な関係を築きたい相手であるマスメディアについての正しい知識と理解です。マスメディアは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ネットニュースなど多様で、それぞれに特性があります。さらに、各社によっても報道の方針や傾向が異なります。各メディア、各社の特性を考慮したアプローチが求められます。まずはマスメディアに関心を持つことです。トップや幹部は少なくとも新聞各紙に目を通す、広報担当者は各社の媒体に常に目を通して十分に研究しておく、ということは最低限のマナーです。同時に、個別に記者や編集者と付き合っていく中で理解を深めます。そうすることで、どの媒体がどんなことに注目しているのか、どの記者がどんな話題を追いかけているのか、どんな情報なら関心をもってくれるのか、また報道されやすいのか、を知ることができます。記者や編集者の立場を正しく理解し、マスメディアにとって価値のある情報をタイミングよく提供することではじめて、報道される可能性が出てくるのです。相手のことを知り、相手の立場になって考えるということは、コミュニケーションの基本です。人は興味をもってくれる相手に興味をもつものです。自分に興味がない相手には興味をもってくれません。

最後に、メディアリレーションにおいて、企業や団体とマスメディアの間には意識ギャップが存在することを知る、ということです。企業や団体が広報活動を行う目的は市民の一員として社会との良好な関係を保ち安定した事業基盤を構築することですが、より実際的にはマスメディアに報道されて会社や商品の認知度が上がって売上や利益も増えてほしいという期待があります。したがって、ポジティブな記事を書いてほしいと考えます。一方、マスメディアは読者の関心を引くニュースを求めています。取り上げる価値の高い、反響の大きい素材を求めています。企業や団体の言うとおりには書きません。それに、企業や団体の発表がホームページやソーシャルメディアを通じて直接読める時代です。メディアの判断や見解が入っている客観報道に価値があります。取材される企業や団体は取り上げてほしいことを取材してもらいたいと考え、取材するマスメディアは取り上げる価値のあることを取材したいと考えます。これが、メディアリレーション上の意識ギャップです。そういうものだと理解することがまず大切であり、トップや幹部、広報担当者は自分たちの都合だけで動こうとせず、このギャップを少しでも埋めようと意識して行動することがメディアリレーションの円滑化につながります。

(*1) 一般財団法人経済広報センター「企業によるソーシャルメディア広報に関するアンケート調査」(2011年)
(*2) 公益財団法人新聞通信調査会「第5回 メディアに関する全国世論調査」(2012年)

(JA 農業協同組合「経営実務」2013年11月号 P.22~27)

*目黒広報研究所に投稿したブログを転載しています。

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