経営を強くする広報コンサルティング|株式会社プラスワンコミュニケー ションズ

ブログ
2012.06.12

行きすぎた水際作戦

航空会社スカイマークの乗客向け対応方針を明記した「サービスコンセプト」という機内文書が物議をかもしている。「荷物の収納は手伝わない」「丁寧な言葉遣いは義務付けていない」「苦情は受け付けない」などナイナイづくしの内容だそうです

わたしはこの件の報道に触れ、ポイントカードはお持ちですか問題もついにここまできたかと思った。つまり、抗議を受けないようにすることが最優先事項になってしまった日本の社会において、起こるべくして起こった出来事だということである。

いまやほとんどすべての店で聞かれる「ポイントカードはお持ちですか」という語りかけは、もちろん「ポイントカードを持っているのに出し忘れているのではありませんか、ポイントがつかないと損をしますよ」というお客への親切心で言っているのではない。あとになって「ポイントカードを確認してくれたら思い出して出せたのに」という文句を言うお客、つまり「ポイントがつかなかったのは、店員がポイントカードを確認しなかったせいだ」というクレームに対する水際作戦だ。

全体からするとおそらく少数であろうクレーマーへの対処を優先する店のために、ポイントカードを持っていない善意の不所持者は、一日に何度となく「持ってません」と言わされる。

企業のクレーマー水際作戦は、マニュアルによって具体的な戦術が提示され、店員の最優先業務として忠実に実行される。そして、マニュアルによって定型化された言葉は、店員を通じてコミュニケーションを拒絶する。いわんや直接乗客が読むスカイマークの機内文書をや。

それにしても、この機内文書の起案から機内配備までに、世の中からはどう見えるのか、自分が乗客だったらどう思うか、などの視点で意見する人はだれもいなかったのか。あるいは、だれかは「ちょっと違うんじゃないの」とか「ちょっと言い方変えようよ」とか異議申し立てたんだけど、その意見はつぶされたのだかどうだか。たしかに飛行機というのは全般的にサービス過剰なところがあるから、個人的にはサービスの簡素化で安い運賃というのは歓迎です。要は伝え方です。

スカイマークのホームページでこの件についてのプレスリリースを読んでいたら、問い合わせ先が「営業部広報担当」となっている。顧客の命を預かる会社なのだから、片手間広報でなく、半身は会社、半身は社会の広報部をつくる、あるいは専門家のアドバイスを受けたらいいのに (いまあわてて受けているかもしれない)。

先週たまたまみていた「ティファニーで朝食を」にこんな印象的なシーンがあった。

普段と違うことをやって楽しもうとニューヨークの街に出た主人公のオードリー・ヘップバーンとジョージ・ペパードが、5番街のティファニーに入る。たった10ドルでプレゼントを買いたいという2人に物腰やわらかな年配のベテラン販売員は、少し困った顔をしながらも電話のダイヤル回し(時代を感じます)はいかがかと提示する。もっとロマンチックなものがいいと、2人はさらにこんな無理難題を言う。

「キャンディのおまけのこの指輪にネームを彫ってほしい」

販売員の紳士はキャンディの箱とおまけの指輪を見て、「そのキャンディには今も景品がつくのですか。めまぐるしい世の中でホッとすることでございます」というふうに粋に返す。そして、ちょっと異例ですがと断った上で「当店はものわかりがよいほうで、ご注文いただければ明日の朝には」と言っておもちゃの指輪への名入れを快諾する。

ヒューマンスケールなやりとりですな。シブイです。

*目黒広報研究所に投稿したブログを転載しています。

上に戻る↑

会社情報

広報・PR主導のコンテンツ駆動型コミュニケーション

わたしたちからのメッセージ

正確でわかりやすい情報を社会に発信することは、いまや企業の経営を強くする上で最優先に考えなくてはならないものとなりました。これは、民間企業だけでなく、組織の運営基盤という観点から大学をはじめとする教育機関や公共機関にもいえます。その一方で、メディアの多様化により情報発信の方法は手軽になりましたが、発信する情報の質がより一層問われる時代になったと感じます。

プラスワンコミュニケーションズの特徴は、この発信する情報の中身(コミュニケーションコンテンツ)をお客様といっしょに徹底的に考え、訴求シナリオを作り、戦略的なコミュニケーション活動の具体的な施策を立案できることです。


…続きを読む »

ブログ

IBM新本社を訪ねる

日本アイ・ビー・エムの新本社を訪ねた。虎ノ門にある。

ぼくは1991年から96年までIBMの箱崎事業所に勤務していたが、 …続きを読む »

お知らせ

18年

昨年はプロ野球の阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝し、余勢を駆って日本一になりました。 …続きを読む »

ブログ

広報の仕事の入出力モデル

広報の仕事、とりわけマスメディアとの関係性を説明するとき、基本的な考え方や具体的な事例だけでなく、y=ax という関数を下敷きにした説明を加えるようにしている。広報のように毎日さまざまな相手と込み入った案件を扱う仕事を理解するには、その仕事の内容をいったん抽象化することで本質を捉える必要があると考えるからだ。 …続きを読む »

ブログ

吉田に久蔵を見た

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が日本の優勝で幕を閉じた。1次ラウンドの韓国戦こそちゃんと観戦できなかったが、今日の決勝まで、どの試合もエキサイティングなイベントであった。 …続きを読む »

ブログ

生成AI

生成AIがにわかに表舞台に飛び出してきた。先日テレビで見たオードリー・タンと落合陽一の対談でも、2人ともChatGPTを使っていると言っていた。わたしも影響されて早速Bingで登録、先日から使えるようになった。 …続きを読む »

お知らせ

歳末の候


2022年も暮れようとしています。とにかく時があっという間に過ぎる。 …続きを読む »

お知らせ

20年を目指します

当社は今年度、おかげさまで17期目を迎えることができました。 …続きを読む »

会社情報

会社概要

オフィスの住所が変わりました。

会社名

株式会社プラスワンコミュニケーションズ
PlusOne Communications, Inc

事業内容

広報コンサルティング事業およびコミュニケーション活動支援事業

設立

2006年5月 …続きを読む »

サービス

サービス内容

25年以上にわたる広報・マーケティングの経験を生かし、次のようなサービスをご提供します。

・広報コンサルティング
・プレスリリース作成
・ユーザー事例コンテンツ作成
・イベント/セミナーレポート作成
・翻訳/トランスクリエーション
・講師

ブログ

奴雁の役割

福沢諭吉は、イギリス型議会政治の実現に向けて立憲改進党を結成したばかりの大隈重信に政治家への転身を促されたが、在野の言論人をつらぬいた。このような決断のバックボーンには、福澤の「学者は国の奴雁なり」という考え方があるということを知った。 …続きを読む »

ブログ

「地方紙は死ねない」

NHKのドキュメンタリー番組でおもしろそうなものはかたっぱしから録画するのだが、ついついたまってしまう。別に時間がないわけではないのに、その時には絶対見なきゃと思っていたもの、例えば盛夏に放送される戦争関連のドキュメント、などは放っておくとタイミングを逸してハードディスクに置きっぱなしになる。 …続きを読む »

お知らせ

設立15周年を迎えてました

うっかりしていましたが、当社は今年5月で設立15周年を迎えました。

2006年と言えばふた昔前の00年代。平成の18年。ぼくの世代が懐かしむといえば昭和ですが、 …続きを読む »

上に戻る↑

プライバシーポリシー | サイト利用規約